「よくある目の病気」
第45回目の今回から角膜の病気になります。
角膜とは一般的に言うところの黒目になりますが、虹彩の色が反映するため人種によって見た目の色が変わります。実際は透明の組織であり、表面から眼の奥に向かって順番に、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮の5層構造をとっています。
今回は、点状表層角膜症(てんじょうひょうそう かくまくしょう)を取り上げます。
後述するようなさまざまな原因により、角膜上皮に点状の小さな傷が生じた状態です。一つ一つの傷は点状で浅く、融合して大きくなる傾向が見られず、上皮細胞が欠損した状態と言えます。
角膜上皮はもともと新陳代謝が非常に活発な組織であり、古い細胞は表面から脱落していき、代わりに新しい細胞が生まれています。よって、少々の傷は自然に治癒する力を持っています。
点状表層角膜症が続く場合は、傷を生じさせている力が、自然治癒力を上回っていると考えることができます。まずは原因を検索することが重要です。
【症例】
60歳女性。両眼の結膜炎がなかなか軽快せず、角膜まで痛んできた症例。
主訴は「充血が引かない」。
角膜上に緑色に染まる点状病変が多数確認できる(=点状表層角膜症)。
48歳女性。コンタクトレンズ常用者。ヒリヒリ痛む。コロコロする。
角膜下方に多数の緑色に染まる点状の病変を認める(=点状表層角膜症)。
【症状】
・コロコロする、ヒリヒリする、チクチクするなどの目の痛み、眼の奥が痛い。
・充血。
・涙がでる。
・まぶしい、目を開けているのがつらい。
・見えにくい、ぼやける。
点状表層角膜症の状態になっているのに関わらず、無症状という人もたくさんいます。
これはかなり長期間にわたって角膜に傷ができた状態が続くことによって、痛みの神経の閾値が上昇していることが原因と考えられます。眼科で角膜の状態を詳しく診てもらって初めて傷を指摘される人もいるということです。コンタクトレンズ常用者に多い現象です。
【原因】
さまざまな原因があります。代表的な原因として以下のようなものがあります。
① 乾燥
コンタクトレンズの装用、ドライアイ、兎眼(第6回参照)、顔面神経麻痺など。
② 物理的な刺激、摩擦
春季カタル(第31回参照)、アトピー性角結膜炎(第30回参照)、巨大乳頭結膜炎(第20回参照)など、結膜炎でまぶたの裏に生じた乳頭と角膜がこすれることによって起こる。
眼瞼内反(第1回参照)、睫毛内反(第2回参照)、睫毛乱生(第3回参照)など、睫毛(まつげ)が角膜に物理的に当たることによって生じる。
③ 感染症
④ 薬剤
点眼薬の主成分、または防腐剤で生じることもある。
【治療】
詳細な問診や検査によって原因を探ることがとても重要です。
原因によって、治療内容が変わってきます。
いずれの原因であっても、角膜に傷を生じさせている力と傷を修復する力のせめぎあいと考えられますので、原因を除去して傷を生じさせている力を低下させることと、点眼薬や眼軟膏などを使用して傷を修復する力を増大させることを行います。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)