シリーズ 「よくある目の病気」
第31回は春季カタル (しゅんき かたる) です。
春季カタルは慢性のアレルギー性結膜炎の重症型で、結膜に増殖性の変化が認められるものを言い、春から夏にかけて症状がひどくなり、冬になると症状が軽くなるタイプが多いことから、この名前が付けられています。
実際は季節の変化のパターンに当てはまらない場合もあります。小児、青少年に多く、アトピー性皮膚炎や喘息(ぜんそく)を持っている人に発症する場合が多いです。
【症例】
23歳女性。両眼ともに1年前からかゆみ、充血、メヤニが出る。
コンタクトレンズは1日使い捨てタイプと2週間タイプを併用しており、週5日一日8時間装用している。コンタクトレンズは装用時によくずれる。
喘息があり、アレルゲン検査にてスギ強陽性。
上まぶたの裏側に多数の巨大乳頭の形成を認めた。
同じ症例。治療後6ヶ月。
抗アレルギー薬、抗炎症薬の点眼、および眼軟膏を続けた結果、症状はなくなった。
上まぶたの裏側の状態もかなり改善している。
【症状】
結膜炎の症状として、かゆみ、メヤニ、異物感、充血が挙げられます。
白目と黒目の境(輪部結膜)が腫れたり、盛り上がったりすることがあります。
上まぶたの裏に石垣状の乳頭増殖(巨大乳頭)が形成された場合は、こすれることによって角膜も傷めることがあり、その場合は痛み、流涙、視力低下などの症状が出る場合もあります。
【原因】
慢性のアレルギー性結膜炎の重症型ですが、はっきりと原因がわかっているわけではありません。
アトピー性皮膚炎、喘息、ダニアレルギー、花粉アレルギー、コンタクトレンズの汚れによるアレルギーなどに併発して起こるパターンが多いです。
【治療】
基本的にはアレルギー性結膜炎の治療に沿って行います。
抗アレルギー薬の点眼、抗炎症薬の点眼をまずは行います。
程度に応じて、抗アレルギー薬の内服、抗炎症薬の眼軟膏、免疫抑制薬の点眼を使用します。
重症例では抗炎症薬の内服を行う場合もありますが、長期間になる場合もあるので副作用に注意します。
石垣上の乳頭増殖に対しては、抗炎症薬の局所注射や外科的切除を行う場合もあります。
角膜に合併症を生じている場合には、角膜保護薬、抗生物質の点眼、眼軟膏なども併用します。
アレルギーの原因(アレルゲン)を突き止めるのも重要です。
採血などによって、アレルゲンが判明する場合にはアレルゲンを避ける生活をします。
なかなか改善せず治療が長期間続く場合もありますので、根気良く治療を続けることが重要です。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原 学)