よくある目の病気
第67回はサルコイドーシスです。
我が国の3大ぶどう膜炎は、ベーチェット病、原田病、サルコイドーシスの3つであるとお話してきましたが、今回はサルコイドーシスに関する説明をします。ベーチェット病、原田病に関しては、前回、前々回のブログを参照してください。
サルコイドーシスは全身のさまざまな臓器・組織に肉芽腫(にくげしゅ)という病変ができ、さまざまな症状が現れる全身疾患です。世界中にある病気ですが、人間しか罹らないと言われています。人種や地域によって発生率や重症度に差があります。2004年度の全国調査では、日本人の発生率は10万人中1.7人とされましたが、実際は軽症の人も含めるともっと多いと考えられています。
性別の差は女性が男性より2倍多く、年齢別では20歳代と50歳代の2峰性のピークを示します。男性は若年者、女性は高齢者に多いです。地域でみると北海道に患者さんが多いと言われています。
サルコイドーシスは、自然によくなる場合も多い疾患ですが、1~2割患者さんは重症化するため、厚生労働省の難病に指定されています。
【症例】
33歳男性。2年前に内科でサルコイドーシスと診断されている。
3日前から左眼がかすんで見える。充血している。
これまでも何回か同じような症状を繰り返している。
左眼には虹彩炎が生じており、虹彩と水晶体が癒着している。
ステロイドの点眼薬と散瞳薬を併用し、症状は改善した。
【症状】
全身に症状がでます。特に肺・皮膚・目によく症状がみられます。
目に関連する症状としては、以下のような症状があります。
ものがかすんで見える(霧視)
まぶしく感じる(羞明)
蚊や虫が飛んでいるように見える(飛蚊症)
目が充血する
視力が低下する
全身症状としては、肺の両側肺門リンパ節腫脹(自覚症状に出にくいが肺の所見としては非常に有名)や皮膚の結節性紅斑などがよく知られています。その他にも心臓、神経系、筋肉、骨、表在リンパ節、肝臓、脾臓、上気道、胃、腸、乳房、精巣など、さまざまな臓器・組織に症状が現れます。
以上のような臓器特異的症状の他に、非特異的全身症状も現れます。「疲れ」「息切れ」「痛み」「発熱」「耳鳴」「難聴」「手足のしびれ」「温痛覚低下」などがあります。
【原因】
全身に慢性の肉芽腫性炎症を引き起こす原因不明の病気です。
結核菌説、溶連菌説、ウイルス説などたくさんの学説がありましたが、近年ではプロピオニバクテリウム アクネス(アクネ菌)という菌が原因ではないかという説も有力になっています。
ぶどう膜炎は炎症の種類(起こり方)によって2つに分けることができます。
・肉芽腫性ぶどう膜炎
・非肉芽腫性ぶどう膜炎
肉芽腫性ぶどう膜炎は、リンパ球や類上皮細胞などによる肉芽腫を形成します。病原体や自己組織に反応し、緩やかに発症し慢性化する傾向があります。
非肉芽腫性ぶどう膜炎は、血管から血液成分が漏れることによって、急性に発症します。
前々回のブログで紹介したベーチェット病は、非肉芽腫性ぶどう膜炎に分類されます。
今回のサルコイドーシスは、肉芽腫性ぶどう膜炎に分類されます。
【治療】
一般的にステロイドによく反応します。
重症度に応じて、ステロイドの点眼薬、内服薬、テノン嚢下注射などを使い分けます。
虹彩が炎症を起こした場合は散瞳薬を点眼し、虹彩と水晶体が癒着するのを予防する場合もあります。
硝子体混濁や網膜の合併症に対して、硝子体手術を行う場合があります。
併発白内障や薬物に反応しない続発緑内障を生じた場合には、炎症の状態をみて白内障手術や緑内障手術を行います。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)