「よくある目の病気」
第66回 フォークト(Vogt)-小柳-原田病
今回は前回のベーチェット病に引き続き、「日本の三大ぶどう膜炎」の一つであるフォークト-小柳-原田病について説明します。
【症例】
29歳男性。
約2週間前から両眼ともに充血、物がゆがんで見える、側頭部がズキズキ痛い。
矯正視力は右眼が0.7、左眼が0.8と低下していた。
右眼の眼底写真とOCT(光干渉断層計)による画像。
多発性の漿液性網膜剥離を生じている。
右眼の蛍光眼底造影写真。
網膜剥離を生じている部位に一致して、蛍光色素の貯留が認められる。
ステロイドホルモン内服治療を開始して1週後の眼底写真、及びOCT画像。
網膜剥離が消失している。矯正視力も1.0へ改善した。
【症状】
眼症状・・・前駆症状として頭痛、咽頭痛などのかぜ症状が見られることが多く、その後急激な視力低下で発症します。
多少の発症時期の差がありますが、原則として両眼性に発症します。
充血、かすみ、視力低下、ものが歪んで見える、などがよく見られる眼の症状となります。
眼底検査で漿液性網膜剥離がよく見られます。
全身症状
(1) 髄膜炎・・・頭痛や項部硬直、髄液細胞増多(リンパ球増加)がみられます。
(2) 内耳症状・・・耳鳴り、めまい、感音性難聴など。
(3) 皮膚症状・・・初期症状として頭皮の接触感覚異常(ピリピリ感)。脱毛、白髪化(脱色素)、皮膚の白斑などを生じます。毛髪の症状は発症後半年から数年経過してから生じることが多く、頭髪、まつげ、まゆげによくあらわれます。
【原因】
全身の色素細胞に対する自己免疫疾患と考えられています。発症機序に関する詳細は不明ですが、免疫遺伝的素因がある人に、ウイルスなどの感染が重なって発症するのではないかと考えられています。
ぶどう膜には色素細胞がたくさんあるので、色素細胞への自己免疫反応が起こると炎症を起こします(ぶどう膜炎)。ぶどう膜には虹彩、毛様体、脈絡膜の3つがあることを前回お話しましたが、フォークト-小柳-原田病ではぶどう膜全体で炎症が起こります(汎ぶどう膜炎)。
また神経網膜と脈絡膜の境界にある網膜色素上皮細胞も色素を含有しているためダメージを受けます。脈絡膜の炎症と網膜色素上皮細胞のダメージによって、漿液性網膜剥離が生じ、視力が低下します。
【治療】
基本はステロイドホルモン投与による消炎を行います。
重症度によりますが、入院の上、ステロイドの大量療法、もしくはステロイドパルス療法を行い、発症から早い時期に強力な消炎を行うことが重要と考えられています。
大量療法やパルス療法が終了した後は、ステロイドの内服薬に切り替え、徐々に減量していきます。
軽症の場合は、外来でのステロイド内服と点眼薬のみでコントロールできる場合もあります。
治療は長期間に渡る場合も多いですので、根気強く通院しましょう。
予後は一般的に良好な場合が多いですが、黄斑部の変性などが生じ視力が回復しない場合もあります。また、併発白内障や続発緑内障などが生じる場合もあります。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)