シリーズ 「よくある目の病気」
第27回は、ヘルペス性結膜炎です。
ヘルペス性結膜炎は、ヘルペスウイルスに感染することにより引き起こされる結膜炎です。
症状は結膜以外に、眼瞼や角膜などにも出ます(第13回 眼瞼ヘルペス参照)。
【症例】
23歳男性。多数の濾胞を伴う結膜炎を生じている。
同じ症例の下眼瞼(したまぶた)。多数の水疱が生じている。本人の訴えは「ピリピリして痛い」。
【症状】
主に片眼性
急激に発症する結膜(白目)の強い充血
流涙、眼脂(めやに)
眼瞼(まぶた)に赤みを伴った多数の水ぶくれ=眼瞼炎(第13回 眼瞼ヘルペス参照)
成人の場合 眼瞼結膜(まぶたの裏側)に濾胞を伴う(第21回 濾胞性結膜炎参照)
角膜(黒目)に樹枝状の潰瘍
耳前リンパ節の腫れ
一見、流行性角結膜炎(第26回 流行性角結膜炎参照)と症状が似ているので注意が必要です。
【原因】
病態は、初感染と再発性に大きく分けられます。
初感染は主に小児期が多いですが、最近では成人でも初感染が増えています。
人は、唯一ヘルペスウイルスの自然宿主とされているので、従来は約90%の人は症状が出ないまま5歳までにヘルペスウイルスに感染する(不顕性感染)と言われていました。しかし、近年では成人でも感染率が50%程度まで低下しているといわれていますので、成人でも初感染は十分ありえます。初感染の時に結膜炎などの症状が発症する場合があります。これを顕性感染と呼びます。
一旦感染したヘルペスウイルスは三叉神経節にひそんでおり(潜伏感染)、体の免疫力が低下したり、いろいろなストレスがかかったりした場合に、ウイルスが活性化して増殖し、ヘルペスウイルス特有の症状が出るようになります。これが再発性の場合の発症の仕方です。
ウイルス活性化の誘因には、日光、外傷、感冒(風邪のような症状)、花粉症などのアレルギー疾患、疲労、ストレス、副腎皮質ステロイド薬の投与など、さまざまなものが挙げられます。
【治療】
ヘルペスウイルスはウイルス感染症の中では例外的に抗ウイルス薬が開発されており、これはヘルペスウイルスの増殖を抑制すると言われています。急性期に特に効果があります。抗ヘルペスウイルス薬の眼軟膏、および内服薬を使用します。
混合感染を予防するために抗生物質の点眼薬も併用します。
抗炎症薬は基本的に非ステロイド性の抗炎症薬を使用しますが、場合によってはステロイド性の抗炎症薬を使用することもあります。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原 学)