シリーズ 「よくある目の病気」
第26回は流行性角結膜炎(りゅうこうせい かくけつまくえん)と咽頭結膜熱(いんとう けつまくねつ)です。
流行性角結膜炎は別名「はやり目」とも言われ、伝染力が強い病気です。
咽頭結膜熱は別名「プール熱」とも言われ、同じく伝染力が強い病気です。
この2つの病気は、いずれもアデノウイルスというウイルスによる感染により引き起こされます。
【症例】
31歳女性。流行性角結膜炎。
アデノウイルス感染による結膜炎が治ったあとも、角膜の混濁が持続した。
【症状】
流行性角結膜炎は急激に発症し、結膜の充血、涙が出る(流涙)、メヤニがたくさん出てくる(眼脂)、まぶしい(羞明)、目のかすみ(霧視)、目の痛み(眼痛)、視力低下などの症状が出ます。
かゆみを訴えることはほぼありません。
片眼に症状が現れた場合、数日内に反対の眼にも発症することが多いです。
発症後2週間経過した頃から、角膜に点状の混濁を認めることがあります。
咽頭結膜熱は流行性角結膜炎に比べて結膜炎の症状は格段に軽いですが、代わりに全身の発熱、咽頭の痛みが出ます。
【原因】
接触感染で他人に伝染していきます。特に家族内での感染は起こりやすいので、タオルの共用は避けましょう。結膜からの分泌物(メヤニ)の中にウイルスが含まれており、それが手にも付着しているので、手洗いは必須です。
流行性角結膜炎は主にアデノウイルスの8型、19型、37型によって引き起こされるのに対し、咽頭結膜熱は主にアデノウイルスの3型、4型、7型によって引き起こされると言われています。
流行性角結膜炎と咽頭結膜熱のどちらも潜伏期間は約1週間です。1週間以内に身近に目の赤い人がいなかったかどうか、チェックしましょう。
【治療】
確定診断はアデノウイルス用の診断用キットがありますので、眼科にて短時間(10~15分)でチェックできます。
確定診断を受けたら、他人に伝染しないように注意が必要です。まずプールは禁止になります。学生さんは治癒するまでは登校できません。社会人の場合は、医療職、介護職、エステティシャンなど人に触れる職種は原則出勤停止となります。
家庭内においても手洗いをこまめにし、使ったタオルなどの共有は避けましょう。
アデノウイルスに対しては現在有効な抗ウイルス剤は開発されていません。細菌の混合感染を予防するため抗生物質の点眼薬を処方します。また炎症を抑えるため、抗炎症薬を処方します。炎症の程度により点眼薬だけでなく、眼軟膏を使用します。
炎症が強く偽膜を形成する場合(第19回 偽膜性結膜炎を参照)は、偽膜の除去を行い、眼軟膏を処方します。
角膜炎を併発している場合は、抗炎症薬の長期投与が必要になる場合もあります。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原 学)