「よくある眼の病気」
第50回は角膜浸潤(かくまく しんじゅん)です。
角膜に傷が生じて、角膜上皮及び角膜実質まで炎症をおこして、角膜上皮下を中心に混濁している状態です。
さらに悪化すると、局所の角膜上皮が欠損して、より深い層まで病巣が進展し、角膜潰瘍に至ることもあります。
【症例】
18歳女性。コンタクトレンズ装用者。
朝起きたら、右眼が痛かった。充血している。
角膜下方に円形の白い角膜混濁を認める(角膜浸潤)。
45歳女性。コンタクトレンズ装用者。
昨日の朝起床時、左眼にしみるような痛みがあった。充血している。
角膜上方に円形の白い角膜混濁を認める(角膜浸潤)。
32歳男性。
2ヶ月前にアデノウイルス抗原陽性の流行性角結膜炎に罹患。
結膜炎は改善したが、1週間前から右眼が見えにくい。かすむ。
角膜中央に白い混濁を認める(角膜浸潤)。
同じ症例のフルオレセイン蛍光顕微鏡画像。
角膜中央だけでなく、あちこちに炎症を生じているのがわかる。
【症状】
痛み
充血
流涙
角膜が白く濁る
混濁が瞳孔にかかると、目のかすみ、見えにくい等の視力低下を感じます。
【原因】
最も頻度が高いのは、コンタクトレンズ装用者に起こる角膜浸潤です。レンズの長時間装用、装着したまま寝てしまう、連続装用などで生じる場合があります。
その他に、流行性角結膜炎(第26回参照)に伴う場合、点状表層角膜炎(第45回参照)、角膜上皮びらんからの移行で生じる場合があります。
【治療】
コンタクトレンズ装用者は、治癒するまでコンタクトレンズの装用を中止します。
コンタクトレンズの普段の装用パターンを詳しく問診し、問題点があれば改善します。これを行わないと再び角膜浸潤を起こしてしまいます。
点眼薬は抗生物質、抗炎症薬、角膜保護薬などを使用します。眼軟膏も併用します。
混濁の位置が瞳孔にかかると、視力に影響を及ぼすので、かすむ、見えにくい等の視力障害が長期間続く場合があります。混濁は時間とともに徐々に薄くなります。
角膜浸潤は、悪化すると角膜潰瘍につながる場合があるので注意が必要です。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)