よくある目の病気
第82回は 後部硝子体剥離(こうぶ しょうしたい はくり) ・ 飛蚊症(ひぶんしょう) ・ 光視症(こうししょう) のお話です。
明るい所で白い壁などを見たときに目の前に虫のようなものや糸くずなど黒いものが飛んで見えることがあります。視線を動かすと移動し、暗い所では気にならなくなったりします。このような症状を飛蚊症といいます。
眼球の中は硝子体と呼ばれる透明でゼリー状の線維性組織で満たされており、この透明な硝子体が加齢により液化・収縮し、眼球後部の網膜から硝子体が剥がれることを後部硝子体剥離といいます。
※参天製薬HPより転載
後部硝子体剥離が発生する際に、網膜と硝子体が引っ付いている場所があると網膜が硝子体によって引っ張られ、光がない暗い場所で視界の端でピカピカと光が見えることがあります。これを光視症といいます。
【症状】
飛蚊症・後部硝子体剥離
・黒いものが動いて見える (虫、糸くず、点、輪っかなど)
※「目でみる眼疾患」より転載
光視症
・暗い所で視界の端に光がピカピカ走る
【原因】
加齢とともにゼリー状の硝子体線維は変化し、硝子体線維の薄い部分と濃い部分に分かれます。薄い部分は液化し、液化した部分に濃い線維状の混濁物が浮遊する状態になります。ここに光が当たると、混濁物の影が網膜に投影され、これが飛蚊症の原因となります。つまり自分の硝子体を自分で見ているということになります。50歳未満の飛蚊症の多くはこれが原因です。
※参天製薬HPより転載
50歳を過ぎると加齢により硝子体の液化が進み、収縮し、容積が縮むことで硝子体の後面が網膜から剥がれます。この現象を後部硝子体剥離と呼びます。硝子体の後面は後部硝子体皮質と呼びますが、ここは硝子体線維が濃縮されており、網膜に投影される影も強くなります。よって飛蚊症も大変強い自覚となって現れます。
※参天製薬HPより転載
後部硝子体剥離の発生時に、光がない暗い場所にいると、視界の端の方で光がピカピカ見えることがあり、これを光視症といいます。光視症は硝子体が網膜を物理的に刺激した時に起きると考えられています。硝子体が網膜から剥がれる際に、網膜と硝子体が強く引っ付いている(癒着している)場所があったりすると、硝子体から網膜に牽引力がかかり、この物理的な力が光視症につながると考えられています。
後部硝子体剥離は加齢によりほとんどの人に起こりますが、生理的なもので治療は必要ありません。ただ、後部硝子体剥離に伴い、硝子体出血や網膜裂孔、網膜剥離などが起こることがあるため注意が必要です。光視症の症状がある場合も注意が必要です。
また、若い人でも強度の近視の場合は、後部硝子体剥離が早期に起こる場合もあります。
【治療】
飛蚊症を自覚した場合、ほとんどが生理的なもので、治療は必要ない場合が多いですが、稀に何らかの病気を発症している場合があります。その場合は治療が必要です。
網膜裂孔・網膜剥離
網膜裂孔、網膜剥離(裂孔原性網膜剥離)が起こる前に飛蚊症を自覚することが多いです。後部硝子体剥離発生時に硝子体が網膜に癒着していると、引っ張られ網膜が破れ裂孔や剥離が起こる場合があります。この場合はレーザー治療や入院手術が必要になります。
硝子体出血
後部硝子体剥離に伴って、硝子体が網膜からはずれる際に、網膜血管の一部が裂けることがあります。このことによって硝子体内に出血が拡散し、この状態を硝子体出血と呼びます。同時に網膜裂孔や網膜剥離を併発している場合もあり、注意深い観察が必要となります。
※「目でみる眼疾患」より転載
ぶどう膜炎
ぶどう膜に細菌やウイルスが侵入したり、アレルギー反応により炎症が起きた状態をぶどう膜炎といいます。ぶどう膜炎が起きると、硝子体内に炎症細胞や滲出物が入り込み硝子体混濁を起こし、飛蚊症を引き起こします。炎症がひどくなると視力が低下します。この場合は、ぶどう膜炎に対する治療が必要となります。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)