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脈絡膜新生血管 (よくある目の病気 78)

よくある目の病気

第78回 脈絡膜新生血管 (みゃくらくまく しんせいけっかん)

 

前回の加齢黄斑変性の回でも説明しましたが、黄斑部、特に中心窩脈絡膜新生血管が生じると著しい視力低下を起こします。視野の真ん中が見えにくくなり、日常生活にも影響を及ぼす深刻な状態です。

 

脈絡膜新生血管を引き起こす病気は、加齢黄斑変性だけではありません。

 

今回はそれ以外の病気(近視性脈絡膜新生血管、網膜色素線条、特発性脈絡膜新生血管、ぶどう膜炎)についても取り上げていきたいと思います。

 

網膜の外側の血管が豊富な膜を脈絡膜と呼び、脈絡膜から網膜色素上皮の下や上に、本来は存在しない異常な血管が生えることを脈絡膜新生血管と呼びます。

 

脈絡膜新生血管は、正常な血管とは異なり脆く、血液の成分が漏れたり、出血を起こしたりします。血液成分が漏れると、網膜が腫れたり(網膜浮腫)、網膜下に水が溜まります(漿液性網膜剥離)。このことによって正常網膜が障害され、視機能が低下します。最終的には黄斑部に大きな傷跡(瘢痕)を形成してしまい、そこまで病気が進行してしまうと元の正常な網膜に戻ることはありません。

 

正常の黄斑部の状態

脈絡膜の図

 

 

脈絡膜新生血管が生じた状

脈絡膜新生血管の図

※参天製薬HPより引用

 

 

【症例】

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47歳女性。両眼ともに-18Dを超える最強度近視。眼軸長も両眼ともに30mmを超えている。

2ヶ月程前に、左眼だけで見ると、ものがゆがんで見えることに気がついた。

矯正視力は1.2まで出ている。

眼底写真を見ると、近視性の眼底変化が多数見られる。

 

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光干渉断層計(OCT)画像。

中心窩のやや耳側に、網膜色素上皮より上側(網膜側)に高反射塊を認める。

脈絡膜新生血管の発生が疑われた。

 

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蛍光眼底造影写真

丸で囲んだ部分が、脈絡膜新生血管である。

本症例は最強度近視があり、近視性の脈絡膜新生血管と考えられる。

 

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別の症例。45歳女性。

2年前に右眼の黄斑変性を指摘されている。右眼だけで見ると物がゆがんで見える

矯正視力は1.5まで出る。

眼底写真を見ると、中心窩下に黄白色の線維性の固まりを認める。

 

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OCT画像

中心窩下に、網膜色素上皮の層を貫く高反射塊を認める。脈絡膜新生血管が強く疑われる。

本症例は他に特徴的な眼科的所見がなく、強度近視でもないことから、特発性の脈絡膜新生血管と考えられる。

 

 

【症状】

視力低下

視界の中央が暗く、黒く見える(中心暗点)

ものがゆがんで見える(変視症)

 

 

【原因】

加齢黄斑変性(第77回参照)

50歳以上に起こります。脈絡膜新生血管を生じる病気としては最も頻度が高い病気です。

 

近視性脈絡膜新生血管 (きんしせい みゃくらくまくしんせいけっかん)

近視には種類があり、眼軸角膜から中心窩までの長さ)が前後に延長し、奥行きが増すことを軸性近視と呼びます。強度近視になると眼軸の延長の程度が強く、網膜脈絡膜に負荷がかかり、眼底に様々な異常が生じると変性近視と呼ばれます。変性近視の約10%の方に脈絡膜新生血管が生じると言われています。

 

網膜色素線条 (もうまく しきそせんじょう)

脈絡膜網膜色素上皮の間にブルッフ膜という構造があり、ブルッフ膜の主成分である弾力繊維が著明に肥厚し、石灰化します。最終的にはブルッフ膜が断裂し、稲妻のような線条(すじ)が視神経のまわりにでき、網膜色素線条と呼ばれます。

脈絡膜新生血管がかなりの高頻度で発生し、しかも大多数が経過中に両眼性に発症してしまうという非常に予後の悪い病気です。多くの場合が弾力繊維性仮性黄色腫(だんりょくせんいせい かせいおうしょくしゅ)という皮膚の遺伝性疾患と合併しておこります。

 

特発性脈絡膜新生血管 (とくはつせい みゃくらくまくしんせいけっかん)

50才未満の方に生じ、強度近視でもなく、特別な眼底の所見もなく、他に眼科疾患もなく、脈絡膜新生血管のみが起こります。特発性とは医学用語で原因不明という意味です。

 

ぶどう膜炎

後部ぶどう膜炎を生じる患者さんのうち、少数ですが脈絡膜新生血管が起こる場合があります。

 

 

【治療】

脈絡膜新生血管は一旦発症すると、治療をしても障害された網膜を元の状態に戻すことが困難で、視機能を回復させるのは難しい状態です。治療目標は基本的に今残っている視機能を維持することとなります。

 

治療方法は、前回の加齢黄斑変性の回で説明した方法を応用して行われています。詳細な説明は前回を参照してください。

 

・抗VEGF薬

・光線力学的療法(PDT)

・網膜光凝固術(新生血管の場所が中心窩から離れている場合)

 

 

(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)