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白内障 (よくある目の病気 62)

よくある目の病気

角膜疾患も終了し、今回から水晶体疾患になります。第62回の今回は皆さんが一度は耳にしたことのある、白内障を取りあげます。

 

白内障の話の前に、まずは水晶体について簡単にまとめます。

水晶体は、神経や血管のない無色透明で弾力性のあるレンズです。網膜に自動でピントを合わせる重要な役目を担っています。

水晶体を例えるなら、果実のような造りになっています。真ん中には水晶体核(種)があり、水晶体皮質(果肉)、そして水晶体前嚢・後嚢(皮)となっています。

 

水晶体断面図

※現代の眼科学より抜粋 (水晶体断面図)

 

白内障とは、この水晶体が様々な原因で混濁した状態をいいます。

混濁の現れる部分は、大きく分けて3つあります。

 

水晶体核が濁る・・・核白内障

水晶体皮質が濁る・・・皮質白内障

水晶体前嚢・後嚢が濁る・・・前嚢下白内障・後嚢下白内障

 

濁り方の程度で代表的なものには、水晶体核に着目したEmery-Little分類があり、1~5の程度で分類します。1は濁りの程度が軽く、5は濁りが強いです。

 

 

【症例】

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66歳男性。右眼がいつからかわからないがモノが見えない。矯正視力は光覚弁

水晶体が真っ白に白濁していた(成熟白内障)。

手術後、矯正視力は1.2まで改善した。

 

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31歳男性。アトピー性皮膚炎。両眼とも1ヶ月程前から、かすんで見える

矯正視力は右眼が0.7であった。

水晶体核は透明だが、後嚢下混濁を生じていた。

 

 

【症状】

かすんで見える、ぼやけて見える(霧視、視力低下)

・片目で見て物がダブって見える(単眼複視)

・太陽光や蛍光灯等がまぶしい(羞明)

変わった症状として一時的に近くが見やすくなる等があります。(=水晶体性近視。第64回ブログで詳しく取り上げます。)

症状の程度は、混濁が現れる部位・程度・範囲に応じているので、しっかりその状態を把握しておくことが重要になります。

 

 

【原因】

白内障の原因は、先天性後天性の2つに分けることができます。

 

先天性白内障は、生まれたときから水晶体に混濁をみるものです。代表的なものとしてDown 症候群や妊娠初期に母体の風疹感染による先天風疹症候群があります。

 

後天性白内障には、下記のものが挙げられます。

 

老人性白内障・・・年齢の変化により水晶体が混濁する白内障です。80歳を過ぎれば100%の人に白内障がみられるといわれている、一番ポピュラーな白内障で、白内障全体の約9割を占めるとされています。

 

外傷性白内障・・・眼球打撲などにより水晶体嚢が破損し、水晶体線維の変性・膨化が引き起こされる白内障です。

 

併発白内障・・長期にわたるぶどう膜炎網膜剥離などにより引き起こされる白内障です。

 

糖尿病白内障・・・糖尿病により引き起こされる白内障です。若年者でもみられることがあり、高齢者になれば老人性と鑑別が困難なこともあります。

 

ステロイド白内障・・・副腎皮質ホルモンの長期にわたる全身投与により引き起こされる白内障です。

 

全身疾患に伴う白内障・・・代表的なものとしてアトピー性皮膚炎に伴う白内障がみられることがあります。

 

後発白内障・・・現在、主流の白内障手術後嚢という袋を残して手術を行いますが、術後この袋が濁ってくることがあります。(第63回ブログで詳しく取り挙げます。)

 

 

【治療】

現在の治療では、混濁した水晶体をきれいな透明の状態に戻すことはできません。

視力の改善を希望する場合には、白内障手術を行います。

白内障手術の方法には、大きく以下の3つの方法があります。

手術を受ける場合は、主治医の説明内容を理解した上で手術を受けるようにしましょう。

 

超音波乳化吸引術・・・現在の白内障手術の主流になっている方法です。水晶体嚢以外の部分を超音波を用いて砕き、吸引してしまう方法です。残した水晶体嚢の中に、人工の眼内レンズを挿入して手術を終了します。

 

嚢外摘出術・・・水晶体前嚢に穴を開けて、水晶体核のみを取り出す方法です。残った水晶体嚢の中に人工の眼内レンズを挿入して手術を終了します。水晶体核が硬く、超音波が無効な場合はこの方法で行います。超音波乳化吸引術に比較して、切開創が大きくなります。

嚢内摘出術・・・水晶体を嚢を含めて丸ごと取り除きます。水晶体嚢がなくなるために、人工の眼内レンズを通常の方法で固定できません。

 

白内障の程度が軽度で、日常生活に困っていない場合は進行予防の点眼薬などを使用して経過観察することになります。眼科に定期的に通院していれば手遅れになることはまずありません。手術を行うベストタイミングは人それぞれです。主治医の先生とよく相談して治療方針を決めるようにしましょう。

 

 

(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)