シリーズ 「よくある目の病気」
第1章 第6回は、兎眼(とがん)です。
兎眼とは、目を閉じるときに、まぶたが眼球の表面を完全に覆えない状態を言います。
少し余談になりますが、なぜ兎(うさぎ)の名がついているのでしょうか?
私たち人間は、1分間に約15回瞬きをすると言われています。対して兎は、1時間(60分間)で約12回しかしないと言われています。
この瞬きの少なさから兎の名が付けられたとされています。
【症例】
※「視能学」より抜粋
顔面神経麻痺。
目を閉じるときに、右のまぶたは眼球の下側を覆えていない(右の写真)。
別の症例。48歳女性。右側の顔面神経麻痺を9年前に発症。
症状はずいぶん軽くなっているが、現在でもまぶたが閉じにくく、
右眼はしみる感じや、まぶしい感じがある。
細隙灯顕微鏡検査では、角膜にびらん(細かい傷)を生じている。
【症状】
黒目(角膜)や白目(結膜)が乾燥してしまい、角膜びらんや結膜充血が生じます。
目の強い乾燥感、ごろつき感、痛み、流涙、かすみ、視力低下、などの症状が起こります。
ひどい場合には角膜に深い傷ができてしまったり(角膜潰瘍 かくまくかいよう)、場合によっては感染症を伴い、重症化してしまうこともあります。悪い状態が長く続くと、角膜が白く濁ってしまい(角膜混濁)、視力が出なくなることもあります。
【原因】
兎眼になる原因にはさまざまなものがあります。
① 顔面神経麻痺 目を閉じる筋肉(眼輪筋)を支配している神経が麻痺してしまう。
② 瘢痕性 火傷や裂傷、炎症、手術が原因で、まぶたの変形が生じ、目が閉じれない。
③ 眼球突出 甲状腺機能亢進症や、眼窩腫瘍(がんかしゅよう)、眼窩内炎症など。
④ 眼瞼外反 まぶたが外を向いてしまう病気。
⑤ 眼瞼欠損 先天性や、外傷性、まぶたの手術でまぶたを切りすぎた場合など。
【治療】
原因疾患がある場合は、その治療を行います。
対症療法として、点眼や眼軟膏、眼帯の使用、治療用コンタクトレンズの装用、瞼縁縫合、テーピングなどを行います。
改善がみられない場合は、手術を行う場合もあります。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原 学)