上記の3点に関しては、こちらのページを御覧ください。
本ページでは、小児の近視進行を予防するための、具体的な医学的介入治療の一つとして有力な治療法である、「焦点深度拡張型コンタクトレンズ」について御説明してまいります。
焦点深度とは「ピントが合っていると認識できる範囲」のことを言います。焦点深度拡張型では、ピントが合っていると認識できる範囲が広がることになります。
近視が進行するメカニズムを説明する理論として昔からあるのが、網膜の周辺部で焦点が合っておらず、ピンぼけ像が映っており、それを修正するために眼軸長が延長するのだ、という理論です。
この周辺部ボケ像を修正するためにさまざまな試みがなされてきましたが、近年近視の屈折研究で世界的に有名なオーストラリアのBrian Holden研究所と日本のコンタクトレンズメーカーであるSEEDが共同で開発したレンズが「焦点深度拡張型コンタクトレンズ」になります。
次の論文が小児での近視抑制効果を示したものです(わかりやすいように改変しています)。
Sankaridurg P et al Ophthalmic & Physiological Optics 39 (2019) 294-307
屈折値の大きさ(近視の強さ)の比較では、1年間で約30%、2年間で約32%。
眼軸長の比較では、1年間で約33%、2年間で約25%。
それぞれ近視の進行を抑制できています。
当院でも2020年4月から、「焦点深度拡張型コンタクトレンズ」を実際の治療に用いており、大変良好な治療成績を挙げております。
このレンズが登場するまでは、コンタクトレンズで近視を抑制する方法としてオルソケラトロジーがありましたが、オルソケラトロジーでは、角膜に対する障害が見られたり、アレルギー性結膜炎が生じたりと、眼に対する負担がかなり大きいものでした。それに比較し、「焦点深度拡張型コンタクトレンズ」は1dayの使い捨てソフトコンタクトレンズであるため、角膜や結膜の障害が非常に小さくて済みます。お子様の眼の健康を守りながら近視抑制が可能となり、オルソケラトロジーと比較すると大変安全な治療法と言えます。
また、オルソケラトロジーでは1枚のレンズを平均2年程使用するため、毎日洗浄しなければなりません。「焦点深度拡張型コンタクトレンズ」では、使い捨て1dayソフトコンタクトレンズであるため、毎日交換すれば良いだけなので、洗浄の手間、費用がかからなくなります。
そして、オルソケラトロジーでは近視が強い子供さんの場合(強度近視眼)、非適応になることが多いですが、「焦点深度拡張型コンタクトレンズ」では強度近視眼にも対応できるようにレンズが設計されているため、近視の強いお子様にも対応が可能となっております。
以上をまとめますと、小児の近視進行予防を考えた場合、オルソケラトロジーに比べて焦点深度拡張型コンタクトレンズの利点として、以下の3点が挙げられます。
当院での焦点深度拡張型コンタクトレンズを用いた近視予防治療は自由診療となります。
レンズ代 | 片眼1ヶ月あたり 4,400円(税込) |
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対象のほとんどが小学生のお子様になりますので、レンズの付け外しは御両親にして頂くことになります。当院はコンタクトレンズ処方をはじめ、小児近視治療を専門にやってまいりましたので、経験豊富なスタッフが懇切丁寧に指導致します。もちろん中学生以上のお子様でも、近視が進行している場合には御相談ください。
さらに、焦点深度拡張型コンタクトレンズによる治療と、低濃度アトロピン点眼による治療を組み合わせることが可能です。(低濃度アトロピン点眼治療の説明ページはこちら)
この組み合わせ治療により、より強力な近視抑制効果が得られます。当院においても、焦点深度拡張型コンタクトレンズによる治療を行っているお子様の79%が低濃度アトロピン点眼治療も併用しておられます。ぜひ、御相談ください。