よくある目の病気
第102回 心因性視力障害 (しんいんせい しりょくしょうがい)
心因性視力障害とは、心因性視覚障害の一種で、器質疾患や、眼内の機能異常がないにもかかわらず、視力検査をすると視力が出にくい状態のことです。
【症状】
心因性視覚障害では、視力低下、色覚異常、夜盲、視野欠損、視野狭窄、瞬目過多、間欠性外斜視、小視症などが見られます。さらには聴覚障害を伴うものもあります。
これらの症状は可逆性で、原因となる心因的、精神的問題が解決されれば消失します。
心因性視覚障害のうち、最も頻度が高いものが心因性視力障害です。
発症は9歳をピークに7~12歳くらいの小学校高学年に多くみられます。
男女差があり、女子は男子の3~4倍多くみられます。
最も多いパターンは、急に学校検診で視力が出なくなったため、眼科受診を推奨されるパターンです。この場合、普段の生活ではテレビを見たり本を読んだりすることに差し支えがない場合が多いです。
眼科ではまずさまざまな眼科一般検査を行い、器質的な病気が本当にないかどうかをチェックします。場合によっては頭蓋内疾患を除外するために、CT、MRI、脳波などの検査を行うこともあります。普通に視力検査を行っても視力が出ませんが、トリック法を用いて測ると視力が出る場合が多いです。
【原因】
心因性視力障害は精神的葛藤、欲求不満、心理的ストレスなどが原因となり、眼に器質的疾患がないにもかかわらず、視力が障害されている状態です。
学校や、家庭環境において何らかの問題を抱えている場合が多いので、親にも詳しく状況を問診する必要があります。学校関係では、進学、受験、転校、いじめ、先生との関係などが原因になる場合があります。家庭環境では、両親の離婚や別居、祖父母の同居、きょうだい喧嘩、新生児の誕生などが原因になる場合があります。
特異なものとしては、眼鏡への憧れが強いことが原因となる場合(眼鏡願望)も全体の約10%みられます。友達や、兄弟姉妹、母親が眼鏡をかけていることへの羨望があり、自分も眼鏡をかけたいがために心因性視力障害として現れることがあります。
【治療】
心的原因を探し出し、解決するには家族の協力が欠かせません。まず家族が子供の状態についてよく理解する必要があります。
場合によっては、暗示療法や偽薬の投与を行うこともあります。
なかなかすぐに問題を解決できない場合も多いので、長期的に経過をみることも必要です。
眼鏡願望の子供に対しては、度数の入っていない眼鏡を処方することもあります。度のない眼鏡をかけるだけで1.0まで見える、というようなこともあります。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)