よくある目の病気
第101回は、閃輝暗点 (せんき あんてん) です。
閃輝暗点とは、突然視界に鋸状のギザギザした光が現れ、その光は時間と共に段々と拡大していきます。数分から長い場合で1時間ほど続きます。10~30分ほど続くのが多いパターンですが、やがてギザギザの光は見えなくなります。
芥川龍之介の小説「歯車」にも登場していることから、ご存知の方もおられるかもしれません。
【症状】
視界に鋸状のギザギザした光が現れ、時間とともに光が段々と大きく拡大していきます。
一般的には下記の図のような症状として表現されますが、見えている光の形状や光の色、光っている部分の見え方(視力)、症状の継続時間、出現頻度には個人差があります。
※「神経眼科 臨床のために 第2版」より引用
問診時によく耳にする表現を挙げてみます。
光の形状・・・鋸状のギザギザした光や半円状の光、光の線など
光の色・・・白や茶色、緑、ピカピカ・キラキラ光っているなど
光っている部分の見え方・・・全く見えなくなる、光っている部分が見えにくくなる(うっすら見えている)など
症状が出ている時間は、10~30分くらいが多いようですが、長いものは1時間続く場合もあります。頻度は、数年に一度から毎日起こるまで様々です。
閃輝暗点は、頭痛の前兆現象(オーラ、migraine with aura)として有名です。
頭痛が起こる前に閃輝暗点が起こり、見えなくなった後に頭痛が起こり始める、というパターンが一般的です。ただこのパターンにはまらず、閃輝暗点のみ起こって頭痛なし、閃輝暗点なしに頭痛のみ起こる、というパターンも多いです。いずれにしても、閃輝暗点という現象はもともと頭痛持ちの人によく見られます。
【原因】
網膜で感じ取った視覚情報は、最終的に脳で処理をしています。閃輝暗点の大部分は、脳の視覚情報を処理する部分の血流が一時的に低下することで起こると考えられています。つまり視覚の異常現象ですが、眼球の異常ではなく、脳の異常ということになります。
一般的には一過性の機能的な病気で、症状が治まると脳の状態も正常に戻ります。
ただ、稀ですが脳に器質的変化が生じることで閃輝暗点を引き起こす場合もあります。
閃輝暗点は脳で起こっていることなので、基本的には両目に見えます(右目でも左目でも見えます)。もし片目でしか見えない場合は、閃輝暗点ではなく別の病気を疑う必要があります。
もし、閃輝暗点が見えたときは片目ずつの見え方を確認してみましょう。
【治療】
閃輝暗点に対する治療は、今のところありません。
出現頻度が少なければ脳の血流の一時的な低下として考え、基本的には様子をみることになります。
しかし、毎日起こる、頻度が急に増えた、高年齢になってから初めて出現した、などの場合は稀ですが脳に器質的変化が起こっている可能性もあります。その場合は、神経内科もしくは脳神経外科で精密検査を受けることをおすすめしています。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)