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弱視 (よくある目の病気 97)

よくある目の病気

第97回 弱視(じゃくし)

 

弱視 とは、眼球および視路の器質的な障害を伴わない視力障害のことを言います。

眼鏡やコンタクトレンズなどで屈折異常を矯正しても視力が正常値まで出ません。

 

視覚情報は、角膜水晶体硝子体を通って、網膜の中心窩で焦点を結び、視神経を通って、脳の後頭葉に到達します。この経路を視路 (visual pathway) と呼びます。

 

普通、視力障害が起きる場合は、この視路のどこかで障害が起きるわけですが、弱視の場合は検査をしても器質的な異常が見つかりません。

 

赤丸つき

※参天製薬HPより抜粋

 

弱視にはいろいろな弱視がありますが、ほとんどが乳児期、幼児期に眼を正常に使用しない状態(不使用)が続いた場合に生じます。視力の獲得がうまくいかず機能的な視力低下が引き起こされ、弱視となります。

 

生後間もない赤ちゃんは、ほとんど視力がなく、明るさ、暗さぐらいしか感知していません。

生後約1ヶ月で物の形、2ヶ月くらいで色の判別ができるようになります。

生後約4ヶ月で追視(物を目で追う)するようになります。

だいたい3歳くらいで視力値が1.0になり、6歳で大人と同じように1.5がでるようになり、視力の獲得が完成します。

 

子供時代に弱視を放置しておくと、大人になっても正常な視力が出ずに困ることになります。

 

 

【症状】

弱視の特徴として、下記のような行動が見られることがあります。ご家庭でもチェックしてみてください。

 

・顔を傾けてものを見る

・近距離でテレビや絵本を見る

・目を細めて見る

・ものにぶつかりやすい

・転びやすい

・目の前の小さなものを掴み損ねる

・近くでの作業(お絵かき、ぬりえなど)をするとすぐに飽きてやめてしまう

 

片目が良く見えている場合、気づかないことが多いので片目ずつ隠してみるとわかりやすいかもしれません。

本当に弱視がある場合、極端に嫌がる反応がみられることがあります。

 

 

【原因】

弱視になってしまうのには、さまざまな原因があります。

 

斜視弱視 (しゃし じゃくし)

斜視があると大人ではものが二重になって見えます。

子どもの場合、ものが二つ見えることによって脳が混乱しないように斜視の方の目から入ってくる情報を無視(抑制)するようになります。使われないほうの目の視力は正常に発達せず、片眼の弱視になることがあります。

 

形態覚遮断弱視 (けいたいかくしゃだん じゃくし)

生まれつきまぶたが黒目を覆うほど垂れ下がっていたり(眼瞼下垂)、乳幼児期に長期間眼帯などをつけたりした場合、ものを見る力を鍛えられず片眼の弱視になることがあります。黒目が濁っていたり(角膜混濁)、先天的な白内障などがあった場合にも、二次的に弱視になる場合があります。

 

屈折異常弱視 (くっせついじょう じゃくし)

極端な屈折異常があると、視力の発達を妨げてしまい、両眼、または片眼の弱視になることがあります。頻度が多いのは遠視ですが、強い乱視によっても弱視になることがあります。ごくまれですが強度の近視でも弱視になることがあります。

 

不同視弱視 (ふどうし じゃくし)

右眼と左眼の屈折度数(近視遠視乱視などの屈折異常の程度)に大きな差がある場合、片眼の弱視になることがあります。

 

 

【治療】

子供さんの弱視治療は、早期発見、早期治療が大切です。

屈折異常が原因の弱視の場合は眼鏡(完全屈折矯正眼鏡)を装用させます。

屈折異常以外が原因の場合は、よく見えているほうの眼をアイパッチなどで遮閉し、弱視の目を使わせるようにします。眼の状態に合わせて、両方の治療方法を組み合わせることもあります。

眼科医が時間や頻度などは指示しますが、家庭での治療が中心になるため、家族の協力が不可欠です。

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※「視能学」より引用(白色アイパッチと肌色アイパッチ)

 

視力の発達で大切な時期は乳幼児期です。生後間もなくから、8歳ころまでが視覚の感受性期と言われています。

 

視覚の感受性期 表

弱視は発症が乳幼児のため普段の生活では気づきにくく、家族でも就学時検診までわからなかったという方が多数います。子どもは自分から見にくさを訴えることがほとんどありません。

家庭でも子どもの様子がおかしいと感じることがあれば必ず眼科を受診しましょう。

そして、早期発見のためにも3歳児検診は必ず受診するようにしましょう。

 

 

(京橋クリニック眼科 院長 佐々原学)