よくある目の病気
第90回は高眼圧症(こうがんあつしょう)のお話です。
これまで緑内障のお話、そして眼圧と緑内障の関係などをお話してきましたが、そもそも眼圧とは何でしょうか。
眼球内部にある眼内液の持つ圧力として、眼内圧(intraocular pressure; IOP)があります。
眼内圧が高くなると、視神経に対する負荷がかかり、視神経を構成する細胞(神経節細胞)が傷んでしまうと、視野や視力に障害があらわれ、これすなわち緑内障である、というお話をしてきました。
眼内圧が継続的に高い人は、高眼圧症の人と認定されます。
眼内圧が高い人がすぐに視神経を傷めるわけではありません。しかし、正常眼圧の人に比べると将来的な緑内障を発症するリスクが上がります。よって、眼内圧が高い人は定期的な眼科検診が必要となります。
ところで、眼球内部の圧力などは、本当に計測できるのでしょうか?
動物実験では実際に眼球内部の圧力を測定することが可能ですが、日常の臨床において眼球内部の圧力を直接測定することはできません。日常臨床でいうところの眼圧は眼内圧とイコールではなく、正確に言うと眼球壁圧であります。ただ、眼球壁圧と眼内圧は相関を示すということで、眼球壁圧を用いて眼内圧を推定していることになります。眼球壁圧は角膜を通して計測します。非接触型の空気眼圧計と、接触型の眼圧計の2種類の測定法があります。眼球壁圧は角膜の影響を受けるため、角膜が厚い人は高く、逆に薄い人は低く測定されます。現代の最新の眼圧計ではこれらの角膜による影響を補正して、眼球壁圧から眼内圧を推定するプログラムが搭載されています。
日本における大規模調査(多治見スタディ)の結果から、日本人の眼圧の平均値は14.5mmHg (ミリメートル水銀柱)であり、正常値は10~20mmHgとされています。だいたい20mmHgを超えてくると、眼圧が高い人=高眼圧の人、ということになります。
ただし眼圧はさまざまな因子の影響を受けていますし、常に微妙な変動をしているものです。
眼圧は日内変動といって、一日の中でも時間帯によって変動しています。
また、四季に恵まれた日本においては、季節によっても変動すると言われています(冬季に高く、夏季に低くなりやすい)。さらに日常生活において眼圧に影響を与える因子として、年齢、性別、屈折(近視や遠視の程度)、人種、体位、運動、血圧なども知られています。
つまり実際の臨床において眼圧が高いと認定するには、たった一度の計測では不十分なことも多いのです。さまざまな場面、さまざまなタイミングで眼圧を計測し、なおかつ角膜の影響も補正して計測し、何度計測してもやっぱり高い、となってきますと、本当の高眼圧症と言えるでしょう。
【症状】
高眼圧症のみでは一般的には自覚症状はありません。
【治療】
高眼圧症の人が注意する病気は緑内障です。
健康診断などで高眼圧を指摘されたら、眼科へ行きましょう。
そして再度眼圧を最新の機械で測定し、本当に眼圧が高いのかチェックしましょう。
合わせて眼底検査や視野検査なども受けて、緑内障なのかどうかをチェックしてもらいましょう。
高眼圧症のみで、緑内障ではない場合、将来の緑内障の発症を予防するために点眼治療を行うかどうかは医師の判断によります。
高眼圧症といっても幅がありますので、かなり高い眼圧の場合は、点眼治療を開始して眼圧を下降させることもあるでしょう。
日常生活で注意して自力で眼圧をコントロールすることは困難です。
高眼圧症と診断された人は、眼科医の指導に従って定期的に眼科での検査を受けるようにしてください。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)