よくある目の病気
第84回は、特発性視神経炎 (とくはつせい ししんけいえん) のお話しです。
※参天製薬HPより転載
視神経は、眼球内部の神経である網膜と、脳とを連絡している神経で、第Ⅱ脳神経とも呼ばれます。視神経が異常を起こす病気はいくつもありますが、今回は特発性視神経炎を取り上げます。
視神経の病気には、視神経炎や視神経症がありますが、「特発性」とは医学用語で原因不明(一次性)という意味です。特発性以外の視神経の病気には下記のようなものがあります。
自己免疫性 抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎 視神経炎の10%程を占めています。
虚血性 視神経を栄養する血流が障害されるもの
圧迫性 視神経の通り道が脳腫瘍により圧迫されて障害を受けるもの
外傷性 頭部外傷など
中毒性 有機溶剤や有機リンなどへの暴露、抗結核薬などの服用歴のあるもの
遺伝性 視力低下の家族歴のあるもの、レーベル病、優性遺伝性視神経萎縮など
鼻性 副鼻腔炎またはその手術によるもの
栄養欠乏性 極端な偏食、生活様式や多飲酒に基づく不規則な食事をするもの
【症例】
52歳女性。今朝起きたら、右眼に異和感を感じた。
眼球を動かすと痛みがある。中心から下の方の視界が白くぼやけて見えるため、当院を受診した。
家族歴や既往歴に特記すべきことはない。
右眼の矯正視力は0.4まで低下していた。
右眼は相対性瞳孔求心路障害(RAPD)が陽性。
視神経は両眼ともに辺縁が不鮮明で、やや浮腫状であった(上図)。
フリッカー検査(ちらつきがどのレベルまで判断できるか調べる検査。視神経に異常が出ると低下する)にて、右眼13~18Hz、左眼33~36Hzと右眼が著明に低下。
視野検査にて、下図のような感度低下を認めた(見えにくい場所が黒く表示されている)。
特発性視神経炎を疑い、ビタミン剤と循環改善剤を処方し、経過を観察した。
1か月後、右眼の矯正視力は1.2へ回復。
視神経は上図のように辺縁がクリアになった。
フリッカー検査にて、右眼37~38Hz、左眼39Hzと左右差がなくなった。
視野検査も下図のように著明に改善した。
【症状】
急激な視力低下
かすんで見える
視野が欠けて見える
目の奥の痛み(球後痛)
目を動かすと痛い(眼球運動時痛)
【原因】
原因は不明です。先ほども説明したように、原因が他に明確にある場合は除外されます。
15歳から50歳代までに多く発症し、やや女性の割合の方が高くなっています。
片眼性もしくは両眼性に発症します。
【治療】
特発性視神経炎は基本的には自然回復傾向の強い病気です。特に若年者ほど回復傾向が強くなります。
視機能の回復を早めたい場合は、ステロイドホルモンのパルス療法があります。これは大量のステロイドホルモンを投与し、その後短期間で投与を中止するという治療方法です。視力の回復傾向や、ステロイドホルモン投与による副作用を考慮して判断します。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)