よくある目の病気
第79回は近視性網脈絡膜萎縮 (きんしせい もうみゃくらくまく いしゅく) です。
網脈絡膜萎縮とは網膜と脈絡膜が傷んでしまい、正常の機能を果たさなくなってしまった状態のことを言います。さまざまな原因で萎縮状態になりますが、今回はよく見られる病気として、強度近視によるものを取り上げます。
近視性の網脈絡膜萎縮には、びまん性萎縮 (diffuse atrophy) と 斑状萎縮 (patchy atrophy) の2つのパターンがあります。
【症例】
47歳女性。両眼の強度近視。
右眼の屈折値は-18.50ジオプターあり、眼軸長は30.01mmである。
矯正視力は1.2。
眼底写真を見ると、全体に脈絡膜の血管が透けて見えており、
黄斑部から視神経乳頭にかけて脈絡膜血管に沿った黄白色の変化が見られる。
これは近視性網脈絡膜萎縮の一パターンである、びまん性萎縮 (diffuse atrophy) である。
同じ症例の左眼。
こちらは屈折値が-20.25ジオプターあり、眼軸長は30.92mmである。
矯正視力は1.2。
右眼と同様に脈絡膜の血管が透けて見えており、
びまん性萎縮の他に、丸で囲んだ部分は眼底が斑状に白く変化している。
これは近視性網脈絡膜萎縮の一パターンである、斑状萎縮 (patchy atrophy)である。
【症状】
視野欠損
視力低下
【原因】
近視の強さは3つの因子で決定されます。
1つ目は角膜の屈折力、2つ目は水晶体の屈折力、3つ目に眼軸長です。
網脈絡膜萎縮を起こす強度近視は、3つ目の眼軸長が原因となります。
眼軸長が延長しますと、焦点が網膜の手前になり、その分近視が強くなります。
これを軸性近視と呼びます。
眼軸の延長は、眼球の外と内を隔てている分厚い強膜の変形を伴います。
あまりに眼軸が延長していきますと、強膜の変形に伴い、その内側に存在している脈絡膜や網膜も引き伸ばされ、結果として組織が傷んでくると考えられています。これがすなわち網脈絡膜萎縮となります。
※参天製薬HPより転載
萎縮した部分に対応する視野は欠損します。また、萎縮が黄斑部に進行すると、視力低下につながります。
【治療】
一旦萎縮してしまった網膜や脈絡膜を再生させる方法は、現在のところありません。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)