「よくある目の病気」
第59回は 円錐角膜 (えんすい かくまく) のお話です。
円錐角膜は角膜の中央部分が薄くなり、円錐状に突出する進行性の病気です。
角膜の形が変化することで、乱視(不正乱視)や近視が強くなり、視力が低下します。
主に10代で発症し、進行の停止年齢は我が国では25~30歳と言われています。
非炎症性の角膜変性症に分類されます。
発生頻度はおよそ1万人に1人で、男性の方が女性よりも多く、約3:1と言われています。
両眼同程度に進行する場合と、左右の眼で進行度が異なる場合とがあります。
【症例】
29歳男性。
19歳の時に円錐角膜と診断された。矯正視力は右眼が1.2、左眼が1.0。
左眼は特殊な非球面のハードコンタクトレンズを装用している(上の写真)。
39歳男性。
高校生の頃からソフトコンタクトレンズを使用してきたが、最近見えにくい。
眼鏡やソフトコンタクトレンズだと、右眼が0.2、左眼が0.4くらいまでしか見えない。
特殊な非球面のハードコンタクトレンズを処方(上の写真)して、右眼が0.6、左眼が0.9まで改善した。
同じ症例の角膜形状解析の結果。
図で赤くなっている場所は、円錐角膜により角膜が突出している場所を示している。
【症状】
主に若年者で、急激に視力が低下する人は注意です。
単純な近視や乱視の進行の場合は、検眼レンズ(眼科での視力測定)で良好な視力が得られますが、それでも良好な視力が得られない場合は特に注意が必要です。
円錐角膜の進行は角膜の変形をきたすため、強い近視や乱視(不正乱視)が生じて、視力の矯正が困難になります。
他覚的な所見(眼科医側から見た場合)としては、
角膜実質の菲薄化(薄くなること)
角膜曲率の急峻化(角膜のカーブがきつくなること)
などがあります。
【原因】
原因は不明です。
円錐角膜は孤発例が多く、遺伝的な素因があるものは6%ほどとされています。
さまざまな全身疾患に合併して発症することが知られています。
① 網膜色素変性
② Down症候群
③ アトピー性皮膚炎
が関連のある3大疾患としてあげられます。
眼の局所因子としては、コンタクトレンズの装用、慢性的に眼を擦ること、などが発症に関連すると報告されています。
【治療】
① 軽度の場合
眼鏡やソフトコンタクトレンズでも視力が得られます。
進行が軽度な場合は、そもそも患者本人が自覚していない場合が多いです。
② 中等度まで進行した場合
眼鏡やソフトコンタクトレンズでは良好な視力が得られなくなります。
この場合は、ハードコンタクトレンズを装用します。
ハードコンタクトレンズにも球面タイプと非球面タイプのレンズがあり、
進行した症例では、非球面の特殊なハードコンタクトレンズを用いると、視力が安定する場合があります。
③ 重症まで進行した場合
角膜の中央部が混濁し、ハードコンタクトレンズによっても十分な視力が得られなくなった場合は、角膜移植術を施行します。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)