「よくある目の病気」
第58回目は、老人環(ろうじんかん) です。
老人環は角膜変性疾患の中でも最も頻度が高い疾患です。
【症例】
72歳女性。
右眼の角膜周辺部が白く混濁している(老人環)。
別の症例。角膜周辺部が白く混濁している(老人環)。
(眼科臨床プラクティスより引用)
【症状】
角膜周辺部(輪部)に灰白色のリング状混濁がみられます。
【原因】
脂質の沈着が角膜周辺部の細胞外に起こります。
この脂質沈着は、角膜の下方周辺部から始まり、次第に上方周辺部に見られるようになり、上下の混濁が癒合して、完全な環状の混濁となります。
発症の頻度は加齢とともに高まり、女性より男性に多く、女性では閉経後に増加します。
男性では40~60歳の60%に見られ、80歳以上では100%で見られるとされています。
高脂血症、アルコール中毒症、糖尿病、動脈硬化性心疾患などとの関連も報告されています。
【治療】
老人環は視力に障害を起こす事はなく、治療は不要です。
角膜の周辺部は白く混濁しますが、視力に関係する角膜中央まで広がってしまうことはありません。
50歳未満で症状が出た場合は、冠状動脈疾患との関連が高く、高脂血症の検査が必要な場合もあります。
また、片眼のみに症状が認められる場合は、症状がない側の血管閉塞性疾患を示唆していることもあるので、全身の精密検査が必要な場合もあります。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)