「よくある目の病気」
第48回目は、角膜パンヌスと角膜新生血管(かくまく しんせいけっかん)です。
角膜新生血管とは、結膜から角膜内へ血管が侵入することです。
角膜はもともと血管がない組織であるため、結膜の血管が角膜に侵入する状態は正常では起こりません。
角膜新生血管は表在性、実質性、深在性に分かれ、表在性のものはパンヌスと呼ばれます。
【症例】
25歳女性。
7年前からコンタクトレンズを連続装用しており、夜間もはずしていない。
24時間、365日間コンタクトレンズを装用し続けている。
痛み、まぶしさ、かすみ、充血で来院。
同じ症例の角膜を拡大した写真。
著明な酸素不足により、結膜(白目)の血管が角膜に侵入している(角膜新生血管)。
38歳女性。右眼の角膜炎。
角膜の炎症に反応して、結膜の血管が角膜に侵入している(角膜新生血管)。
同じ症例の治療2週間後の写真。
炎症が落ち着いたことにより、角膜新生血管が退縮している。
【症状】
角膜新生血管が生じるだけでは自覚症状が出ないことが多いです(無症状)。
角膜に創傷や炎症が生じていると、その病気に伴う症状が起こります。
酸素不足のみの新生血管では症状が出ないことが大半です。
【原因】
大きく分けると3つくらいに分けられます。
① 角膜に創傷が生じている場合(創傷治癒の反応として血管が伸びる)
② 角膜に炎症が生じている場合(炎症に反応して血管が伸びる)
③ 角膜への酸素供給が足りない場合(酸素不足に反応して血管が伸びる)
①はさまざまな外傷などで生じます。
②はさまざまな角膜の炎症性疾患(角膜炎)で生じます。感染性と非感染性があります。
③は主にコンタクトレンズの長時間装用で生じます。
角膜はもともと血管が無い組織で、空気中から涙を通して酸素を取り込んでいます。
角膜に酸素が十分に与えられない状態が続くと、酸素供給を行うため角膜輪部(黒目と白目の境目)から、角膜中心に向かい血管が伸びていきます。
つまり、コンタクトレンズ装用者に見られる角膜新生血管は角膜が慢性的に酸素不足に陥っているサインになります。
また、長期間にわたり角膜の酸素不足が続くと、角膜内皮に障害が生じます。
(角膜内皮障害については、次回のブログにて説明致します。)
【治療】
角膜に創傷や炎症が生じている場合は、その原疾患を治療します。
コンタクトレンズ装用者の場合は、まずコンタクトレンズの使用状況を詳しく問診します。
一日の中での装用時間の短縮、一週間の中での装用日数の短縮、などを個別に指導します。
どうしても長時間装用したい場合は、酸素透過性の高い「シリコンハイドロゲル」素材で作られたコンタクトレンズへの変更を行います。
ただし、角膜内皮障害がひどい場合は、コンタクトレンズの使用を中止しなければならない場合もあります。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)