シリーズ「よくある目の病気」
第44回は強膜炎(きょうまくえん)のお話しです。
強膜とは眼球の壁に当たる部分で一般的に白目と呼ばれる部分のことをいい、白目は表面から結膜、Tenon嚢(テノンのう)、上強膜、強膜の4層に分けられます。
その強膜の部分に炎症が起きている状態を強膜炎と言います。
強膜炎は破壊性の強い重篤な眼疾患で、上強膜炎(前回参照)とは全く違った経過をたどります。
【症例】
48歳女性。
1週間前に風邪を引いて発熱した。
昨日の朝から右眼の眼球全体が圧迫されるような痛みが出た。
眼球の痛みがひどくて夜、目が覚める。
白目の充血と腫れがひどい。まぶしく感じて、視力が落ちている。
右眼の拡大写真。
強膜の表面が黒色に変化している。
ステロイド内服治療を開始して、2週間後。
充血はかなり改善し、眼痛も改善した。
【症状】
自覚症状としては眼痛、充血、羞明(まぶしい)、視力障害などがあります。
特に強い充血、激しい痛みを伴います。痛みが強く眠れなくなることもあります。
【原因】
強膜炎は炎症の起こっている場所によって、前部強膜炎と後部強膜炎があります。また、炎症の形態によってびまん性強膜炎、結節性強膜炎、壊死性強膜炎に分けられます。
原因不明の場合が最も多いですが、全身の疾患に合併して起こることもあります。慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、側頭動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、痛風、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、糸球体腎炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、結核、梅毒、ヘルペスなどがないか、採血を行い調べます。
【治療】
膠原病や全身性感染症などの疾患がみつかれば、専門医と相談のうえ治療を行います。
眼科的治療としては強膜炎の重症度に応じて、ステロイドの点眼、結膜下注射、ステロイドの内服を選択します。
ほとんどの強膜炎が強い眼痛を伴うので鎮痛剤を併用します。
状態によっては免疫抑制剤や抗生剤を使用します。
重症例ではステロイドパルス療法や手術治療を行う場合もあります。
ステロイドの内服は症状が改善していけば投与量を徐々に減らしていきます(漸減療法)が、自己判断で急にやめると危険です。医師の指示通り治療することが大切です。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)