シリーズ 「よくある目の病気」
第28回目は花粉症です。
花粉症は目以外にも、鼻、喉(のど)にも症状が出る場合がありますし、その他にも頭がボーッとするとか、集中力がなくなるとか、全身がだるいなどの症状が出る場合もあります。
花粉症とは、全身の各組織における花粉に対するアレルギー反応が症状になって現れた状態のことを言いますが、目に出る花粉症はアレルギー性結膜炎となって現れます。
今回は花粉症によるアレルギー性結膜炎に絞って解説してみたいと思います。
地域によって多少時期は異なりますが、花粉症を起こす植物として、スギ(1~4月)、ヒノキ(3~5月)、カモガヤ(5~7月)、イネ(7~8月)、ブタクサ(7~10月)、ヨモギ(8~10月)などが代表的です。
【症例】
38歳女性。両眼ともに上まぶたの腫れ、白目の腫れを主訴に来院。コンタクトレンズは使用せず。
3月になってから症状が出た。
血液検査にて、スギ花粉強陽性。ヨモギ花粉陽性。
上眼瞼結膜(上まぶたの裏)は著明な充血と、乳頭形成が見られる。
同じ症例の眼球結膜(白目)の写真。腫れて浮腫の状態になっている。
【症状】
かゆみ、充血、眼脂(めやに)、異物感(ゴロゴロする)、流涙(涙が出る)、結膜浮腫(ふしゅ:白目の腫れ)、眼瞼(まぶた)の腫れなどが起こります。
花粉症の時期にコンタクトレンズを装用すると、アレルギー性結膜炎の炎症反応が増強し、症状が悪化してしまいます。重症の方は花粉の飛散時期が過ぎるまでコンタクトレンズの装用を中止するのが望ましいです。
どうしてもコンタクトレンズを装用したい方は、できるだけ装用期限の短いコンタクトレンズ(例えば2週間タイプより1日使い捨てタイプ)を使用する方が良いです。
【原因】
人体には免疫システムが備わっており、外部からの異物を排除するための免疫記憶があります。
花粉症の人は、花粉を「排除すべき異物」と免疫システムが記憶してしまっており、花粉が来た時にしなくてもよい過剰な生体反応を起こしてしまいます。これがアレルギー(過剰反応)です。花粉症はⅠ型アレルギーに分類されます。
体質的に花粉症になってしまうことを、花粉に「感作(かんさ)」すると呼びます。
この状態が一旦形成されてしまうと、花粉は人体にとってアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす原因物質)となります。
自分にとってどの花粉がアレルゲンになってしまっているのか、採血などで調べることができます。免疫システムはそれぞれのアレルゲンに対して個別にIgE抗体を作っているので、採血して血液中のIgE抗体の値を調べるのが有用です。例えばスギ花粉症の人は、抗スギIgE抗体の値が高くなっています。
花粉と結合したIgE抗体が目の粘膜(結膜)に存在する肥満細胞と結合すると、肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され、アレルギー反応が起こります。
【治療】
① アレルゲンの回避
まずは、自分が何に対する花粉症なのか、調べましょう。
毎年何月に症状が起きているのか、時期的なもので原因花粉を推定することは重要です。
血液検査でIgE抗体価を調べ、自分の中で確信を持ちましょう。
原因となる花粉がわかったら、できるだけ被曝しないように避ける努力をしましょう。
外出を控える、花粉飛散情報を確認する、花粉対策メガネもあります。空気清浄機も性能が向上しています。
② 点眼薬
抗アレルギー薬は、肥満細胞からのヒスタミンの遊離(放出)を抑制すると言われています。
花粉の飛散が始まる2週間くらい前から予防投与しておくことによって、飛散時期の症状を軽減することができます。
抗炎症薬は主にステロイド性を使用します。重症度と副作用に注意しながら、種類、濃度を選択します。
③ 内服薬
点眼薬のみで症状が改善しない場合、また予防投与を行う場合は、抗アレルギー薬の内服薬を使用します。
④ 眼軟膏
重症の場合や小児などでなかなか点眼が困難な場合、流涙が激しく点眼液がすぐ流れてしまって効果が期待しにくい場合などに使用します。
⑤ 体質改善(舌下免疫療法)
花粉症の体質自体を改善したい場合、舌下免疫療法といって、少量のアレルゲンを長期に服用することによって、花粉症の症状を軽くする方法があります。
⑥ コンタクトレンズの使用法を変える
花粉の飛散時期はなるべくコンタクトレンズを装用しない方が望ましいです(炎症反応が軽くで済む)。どうしてもコンタクトレンズを使用したい場合は、医師に相談してください。一般的には、できるだけ装用期限の短いコンタクトレンズ(例えば2週間タイプより1日使い捨てタイプ)を使用する方が良いです。
(監修 京橋クリニック院長 佐々原 学)